*2022年9月19日追記
2022年9月8日、エリザベス女王陛下が96歳でご逝去されました。
競馬をこよなく愛された女王のご逝去を悼み、安らかにお休みになられるよう心からお祈りしています。
今日はエリザベス女王陛下とディープインパクトとのつながりについて書いていきたいと思います。
新型コロナウイルスの感染が世界中で大きな問題になり、世界の競馬も開催中止を余儀なくされました。
日本は幸いなことに無観客での開催が可能になりました。
現在も関係者の懸命の努力によって、予定通り競馬が続けられています。
イギリス王室が主催するロイヤルアスコットも、感染拡大を防ぐため、無観客での開催が決定しました。
6月16日~20日までの日程で、いつもの年とレースの実施順などを変更して行われます。
今年は無観客なので、いつも皆が楽しみにしていた、エリザベス女王陛下の馬車でのご入場も見られないんですかね。
無観客でも、テレビでは皆見るんだから、いつも通り馬車で入場してくれないかなあ・・・。
イギリス王室は代々競馬と深い関わりがあり、アスコット競馬場を所有しています。
そのアスコット競馬場で毎年、王室主催で開催されるのが「ロイヤルアスコット」というイベントなのです。
先日、今年94歳になられた女王が、乗馬を楽しんでいらっしゃる写真が公開されました。
📸: Queen Elizabeth II seen outside for the first time since coronavirus lockdown began as she is photographed riding a horse in the grounds of Windsor Castle. https://t.co/jLBeqkoKTS pic.twitter.com/vR5BZTX4O3
— ABC News (@ABC) June 2, 2020
女王は競馬が大変お好きで、ご自身も競走馬を所有されています。
そして、日本で競走馬、種牡馬として活躍したディープインパクトとも意外なつながりがあります。
この記事では、エリザベス女王陛下とディープインパクトのエピソードをご紹介したいと思います。
エリザベス女王とディープインパクトの関係
エリザベス女王が競走馬を所有されていることはすでに書きました。
馬主としての女王陛下については、JRA-VANのサイトに秋山響さんが記事を書かれています。
【世界の馬主紹介 Vol.4】エリザベス女王 | JRA-VAN Ver.World
エリザベス女王は、ディープの母方の曾祖母であるHighclereを所有されていました。
Highclereは1974年の英1000ギニーと仏オークスを勝った名牝です。
ディープの母系はHighclereの前の世代も、代々王室が所有していたそうです。
Highclereの2番仔のBurghclereが、ディープの祖母にあたります。
BurghclereはBarrownstown Studで繁殖生活を送り、ディープの母であるウインドインハーヘアを産みました。
この牧場は世界有数のサラブレッド事業体であるクールモアと深いつながりがあります。
女王は数年前まではイギリスの有名な競馬日刊紙のRacing Postを朝食の時にお読みになって、競馬の情報をチェックされていたとか。
94歳になられた今もそうされているのかはわかりませんが。
2015年6月にはディープ産駒のスピルバーグが、ロイヤルアスコットのプリンスオブウェールズステークスに出走。
グリーンチャンネルが同レースを中継しました。
その際に、解説の合田直弘さん(世界の合田さんと言いたい・・・)が、女王が競馬に大変お詳しくて、情報収集されていることを話していました。
そして、女王は日本の競馬関係者に会うと、
「ディープは今どうしているのか」
とお尋ねになっていたそうです。
もともとは王室が代々所有していた牝系から、ディープのように大活躍する馬が出たことをお喜びになっていたのではないでしょうか。
その後、ディープ産駒がヨーロッパでも優れた成績を挙げます。
それをご覧になったのか、女王は自らが所有する牝馬のディプロマを日本に送ります。
そして、2017年、2018年の2年連続でディープと交配させました。
ディプロマは2018年に日本で牝馬を出産。
その後イギリスに戻って、2019年に牡馬を出産しました。
ディプロマを日本に送られた際には、ディープがいた社台スタリオンステーションに、女王が親書を送られたとのことです。
追記: この記事を書いた後に、J-horsemanというサイトのインタビュー記事を見つけました。
ホーストレーダーのジョン・マコーマックさんにインタビューした記事です。
マコーマックさんはディープの母のウインドインハーヘアの取引を仲介しました。
ディープの母馬は女王が所有されていたファミリーの出身。
そこで、ディープがダービーを勝った後、マコーマックさんが女王のレーシングマネージャーに
「カツミさん(ノーザンファーム代表の吉田勝己さん)に手紙を出したらどうですか」
と話したら、本当に手紙を書いてくれたのだそうです。
マコーマックさんは、
「自分のファミリーの子孫が活躍して女王も嬉しかったんでしょうね」
と言っています。やっぱりそうですよね。
ということは、社台グループは女王から複数回親書を受け取られているということですよね。
親書は公開するものじゃないでしょうし、女王陛下にも失礼だから公開しないでしょうが、見てみたいなー。
あと、女王が所有されているディプロマという牝馬。
ディープが旅立つ前の2019年3月に、NHK北海道が放送したディープの特集番組に登場していました。
番組のタイトルは、「世界が求む ディープインパクトの血統」。
現在は削除されてしまったのですが、同番組のHPにディプロマの写真が掲載されていました。
また、社台コーポレーションの海外交渉担当の細田直裕さんのコメントもありました。
女王陛下の方から(種付け)のオファーがありました。私どもも光栄なこと。
もともとは王侯貴族が始めたスポーツでありゲームであるので、
認められたというのは本当に意義のあることだと思います
ちなみに、フジテレビが制作したディープのレース映像を収録した以下のDVD。
ディープの母について取材した特典映像が収められています。
ディープが凱旋門賞に出走する前に、俳優の緒方直人さんがイギリスとアイルランドに取材に行かれた様子をまとめたものです。
アイルランドのBarrownstown Studでは、牧場のオーナーに話を聞いています。
母のウインドインハーヘアが生まれた時の様子や、繁殖牝馬として牧場に戻ってきた時の話です。
また、母が初仔を出産した後に牧場を出た経緯や、ディープインパクトの印象なども尋ねていて興味深いです。
イギリスでは、競走馬時代にウインドインハーヘアを管理したヒルズ調教師にも話を聞いています。
ウインドインハーヘアは走りたいという気持ちが強い牝馬でした。
レースではいつも後方から行って、鋭い足で伸びてくるという話をされていました。
ディープのレースぶりと共通するものがあって、面白かったです。
ウインドインハーヘアは子供をみごもった状態でG1レースを勝った馬としても有名です。
そのあたりの経緯についても触れています。
ヒルズ調教師がディープの天皇賞春の映像を見て、感嘆されていたのが印象的でした。
あのレースを見れば、誰でもそうなりますよね・・・。
【楽天競馬】が【楽天銀行(旧イーバンク銀行)】でご利用可能に!エリザベス女王とディープインパクト産駒
エリザベス女王は、英ダービーやロイヤルアスコットには毎年出席されて、競馬をご覧になっています。
その御前で、ディープ産駒が大きなレースを勝てたらいいなとずっと思っていました。
2017年に産駒のSeptemberが、ロイヤルアスコットのChesham Stakes (リステッドレース)で優勝しました。
残念ながら大レースではなかったですが。
ロイヤルアスコットですから、女王も見てくださったはず。
表彰式で王室の方がトロフィーなどを関係者に授与されるのですが、G1ではないので、女王からいただいたわけではありません。
ちょっと残念。
2015年にはスピルバーグが、2016年にはエイシンヒカリがロイヤルアスコットのプリンスオブウェールズステークスに出走しました。
しかし、どちらも上位には来られませんでした。
2018年にはSaxon Warriorが英2000ギニーで優勝しましたが、女王が競馬場におみえになったかはわかりません。
たぶん、いらしていないだろうなあ。
英ダービーでは残念ながら破れてしまったので、女王の御前でレースを勝つことはできませんでした。
特に日本から遠征したディープ産駒にとって、イギリスの競馬場は、良さを発揮しにくい舞台なのかもしれません。
自然のままの地形を生かし、高低差もあり、でこぼこもある競馬場なので。
フランスや香港、ドバイ、オーストラリアでは実績があるんですけど。
でも、Saxon Warriorが英2000ギニーを勝っているんだから、全くダメというわけではありません。
女王陛下はご高齢のため、日本に来られることは難しかったでしょう。
ディープも種牡馬として大忙しで、リスクのある輸送はできなかったでしょう。
でも、女王陛下には一度ディープと対面していただきたかったと思います。
ディプロマが産んだディープの子供たちが活躍してくれることを祈っています。
競走馬として活躍できなくても、繁殖馬として、血をつないでいってくれるといいな。
2021年4月22日追記
上に記したように、エリザベス女王所有の繁殖牝馬、Diplomaは2018年にディープ産駒の牝馬を出産。
Portfolioと名付けられ、2歳になった昨年デビュー。
これまでに3戦して2着1回、3着1回。なんとか勝ち上がってほしいです。
以下は3戦目の映像です。
https://twitter.com/gokuumapog/status/1382473667209138177
今年2歳になる全弟はEducatorと名付けられ、ウィリアム・ハガス調教師のもとでデビューに向けて調教を積んでいます。
2021年9月26日追記
上の追記に記したEducator、昨日未勝利戦で勝利を収めました🎉
👏 A 3️⃣2️⃣nd winner of the year on the Flat for Her Majesty The Queen as Educator (Deep Impact) sheds the maiden tag at the third time of asking with the first-time cheekpieces doing the trick for William Haggas & @CierenFallonJr at @haydockraces pic.twitter.com/hApv4paaa7
— Racing TV (@RacingTV) September 25, 2021
3戦目で初勝利です。思ったより早かったですね。
お姉さんのDiplomaは今年の7月3日、5戦目で初勝利を収めました。
その約2週間後にもレースに出走し、連勝。
その2週間後に(苦笑)リステッドレースに出走し、3着。
この結果により、馬名にブラックタイプがつくことになりました。
8月にはSnowfallがヨークシャーオークスに出走した日、同じ競馬場で再びリステッドレースに出走。
Snowfallが強い勝ち方をした後のレースだったので、同じ父親ということで注目を集めました。
しかし、結果は6着。
その後はレースに出走していませんが、そろそろ休養が必要だと思います。
これでエリザベス女王が所有されているディープ産駒は2頭とも勝ち上がり。
喜んでくださっているでしょうか。
2頭の今後の活躍を楽しみにしています。
*2022年10月1日追記
エリザベス女王が所有されていた競走馬、繁殖馬は、チャールズ国王が引き継がれることがわかりました。
オーナーの名義が変わった後、ディープインパクト産駒のEducatorが、チャールズ国王の所有馬として初めて出走しました。
9月29日、イギリスのSalisbury競馬場で開催された2000mのレース。
残念ながら2着で、オーナーのチャールズ国王の初勝利とはなりませんでした。
でも、所有馬の先陣を切って出走できたことは、光栄でした。
*2023年4月29日追記
エリザベス女王が所有されていたディープ産駒の牝馬、Portfolioが繁殖に上がったことがわかりました。
3歳時の2021年8月のレースで6着になったのが、最後のレースになりました。
通算成績は8戦2勝2着1回3着2回。
2022年にフランケルと交配したとの情報がありますが、今年産駒が無事誕生したかどうかは確認がとれていません。
以前、チャールズ国王は相続した繁殖牝馬と仔馬を売却し、競走馬の生産からは手を引くという報道がありました。
Portfolioや母馬のDiplomaが今後売却されるのかはわかりませんが、注目していきます。
Portfolioの全弟、Educatorは騸馬になりましたが、4歳になった今年も現役を続行しています。
4月25日に約半年ぶりに出走しましたが、残念ながら上位には来られませんでした。
現在のオーナー名義はHM The King & HM The Queen Consort。
チャールズ国王とカミラ王妃の共同所有ですね。
なんとかまた勝利をつかんでほしいです。
掲載したディープの画像は、以下のツイッターアカウントさんに許可を得て使わせていただきました。
画像が掲載できてうれしかったです。ありがとうございました!
「血統分析と調教チェックをつらつらと。@sushikamechan 」