そのまんまのタイトルなんですけど(笑)。
先日NHK BSで、今年2月引退された藤澤和雄元調教師の特集番組が放送されました。
番組のタイトルは「調教師 藤澤和雄 最後の400日」。
NHKのスタッフが、引退を控えた藤澤和雄元調教師に密着したドキュメンタリーです。
密着取材は2021年1月から始まっていました。
今日はこの番組の感想を書きます。
いちいち「元調教師」と書くのも大変なので、見出し以外の本文では「藤澤調教師」、「藤澤師」と書きます。
藤澤元調教師の信念と勝利を目指す姿勢
藤澤厩舎のスローガンのような言葉、「幸せな人間が幸せな馬をつくる」。
また、1500勝を記念して美浦トレーニングセンターに立てられた石碑には「一勝より一生」。
青葉賞で、キングストンボーイが藤澤師にとって最後のダービーに出走する権利を獲得しました。
しかし、青葉賞での疲れが抜けなかったことから、藤澤師はダービーへの出走を回避させる決断をします。
このような話を聞くと、馬への優しさだけが強調されているように感じます。
でも、番組を見て、馬にとって本当によいことを考えるのももちろんですが、勝利を目指す気持ちも同じくらい強かったのだと感じました。
番組ではここまでは言っていなかったのですが、競走馬である以上、勝たないと将来が保証されないのも事実です。
一頭の馬のまわりにはオーナーや関係者もいて、その人達を満足させないと、良い馬が入ってこなくなります。
また、結果を出さないと、厩舎の経営にも影響が出て、スタッフのモチベーションも下がります。
事実、開業当時は経験豊かな年上のスタッフが多くて、「こんな調教の仕方では勝てない」とも言われていたそうです。
でも、藤澤師は「5年間は俺の好きにさせてくれ」と言って、5年めにシンコウラブリイのGⅠ制覇で結果を出しました。
馬に負担をかけすぎない「馬なり調教」を貫きながら、現役最多の1570勝を挙げられたところが本当に素晴らしいと思いました。
勝敗だけに目が行きがちなんですが、厩舎の方々は試行錯誤して、良い結果を出そうと頑張っておられるんですよね。
こういう番組を見ると、それを痛感します。
大人しくてかわいいグランアレグリア
「藤澤厩舎最強の馬」みたいに、すごく持ち上げられていたグランアレグリア(笑)。
レースでは暴力的なまでに強かったのに、普段は大人しくてとてもかわいかったですよね。
私はディープインパクトのファンで、グランアレグリアも大好きなので、たくさん出てきてとてもうれしかったです。
NHKにこれほど密着してもらえるのはなかなかないので、ラッキーだとも思いました。
藤澤調教師の引退とタイミングが重なったからなんですが。
ラジオ大好きグランアレグリア
グランアレグリアがラジオを聞くのが好きだと言うのは、大きな話題になっていましたよね。
大レースでの観客の大歓声(そう言えば馬名でしたね)に慣れるために、藤澤厩舎ではラジオをつけていたそうです。
3歳の桜花賞前には、「相撲中継は嫌いで、国会中継はよく聞いている」というエピソードが伝えられていました。
#グランアレグリア ちゃんの1日をちょこっと覗かせていただきました。
馬房ではなんとラジオを聞いているそうで、担当の渡部助手曰く…
「相撲中継が嫌みたいで、相撲が始まるとラジオから離れます。国会中継はよく聴いてるので、政治には詳しいと思いますよ(笑)」https://t.co/sCed2TPcDj
— netkeiba (@netkeiba) April 3, 2019
今回の番組のなかでは、音楽をよく聞いてましたね。
馬房の奥にある窓の下の方にラジオが設置されていました。
グランは頭を窓に向けて、首を下に垂れるような姿勢でじっと聞き入っていました。
ラジオに耳を近づけている感じだったので、やっぱり好きなんでしょうね、ラジオを聞くのが。
なかなかカメラの方に向かないので、渡部助手さんが
「ちょっとファンサービスした方がいいんじゃないの?」
と言ってましたね。
あと、渡部助手さんと言えば、グランが口笛が好きだからと、パドックで周回している時に口笛を吹いていました。
やっぱり音や音楽が好きだったのかな。
渡部助手のインタビュー記事の感想を、グランアレグリア 担当厩務員さんが明かす激闘の裏側に書いています。
あんなにも強かったスプリンターズステークスのレース前のエピソードが、本当に驚きでした。
寝藁を食べるグランアレグリア
藤澤師が様子を見に馬房に行ったところ、グランが寝藁を食べていて、
「そんなの食べなくても、食べるものあげる」
と言っていたことがありましたね(笑)。
寝わらを食べるエピソードはハープスターにもあって、懐かしく思い出しました。
ひょっとして強い牝馬は寝わらを食べるのかしらん。
2021年のローテーション
番組によると、2021年のグランにとっての大目標は天皇賞秋への出走でした。
オーナーサイドと藤澤師が話し合い、
大阪杯 → ヴィクトリアマイル → 安田記念 → 天皇賞秋
のローテーションが決まったそうです。
海外遠征の話は出なかったのかなとも思いますが、コロナ感染の状況も落ち着いていなかったですしね。
番組では「短距離しか走っていない馬が、2000mの大レースに勝利することが、藤澤師にとっての大きな目標だった」と言っていました。
確かに出走させるレースには勝たせたいと思っておられたと思います。
馬なり調教のほかに、心肺機能をアップさせるための対策も行っていました。
1ヶ月間、長い上り坂のある坂路で入念に乗り込んだのです。
でも、藤澤師は「短距離しか走っていない馬が、2000mの大レースに勝利すること」には、番組で言っていたほどにはこだわっていなかったようにも思えます。
視聴者の勝手な感想ですが。
あと、大阪杯の後に、藤澤師がグランの闘争心が衰えたのではないかと心配されていたのは意外でした。
大阪杯は不良馬場で力が発揮できなかっただけだと私は思っていましたから。
大阪杯「不良馬場が合わなかったのか、2000mが合わなかったのかわからない」ともおっしゃってましたね。
闘争心の懸念は、ヴィクトリアマイルの圧勝で払拭されました。
藤澤厩舎最強の馬
先ほども言ったように、番組では「グランが藤澤厩舎最強の馬」みたいなことを言っていました。
私はグランが大好きなので、そう言われてうれしかったです。
グランは藤澤厩舎のGⅠ最多勝利馬だそうです。
藤澤師は、天皇賞秋の前にグランのことを
「何年に一度の馬。若い馬にそう簡単に譲らない」
と言っていました。
ラストランのマイルチャンピオンシップで、そのことが証明されました。
でも、「グランが藤澤厩舎最強の馬」ということに同意できない方も、結構いるだろうなとも思いました。
タイキシャトル、シンボリクリスエス、ゼンノロブロイ、レイデオロなど、藤澤厩舎には素晴らしい馬がたくさんいましたしね。
グランが「藤澤厩舎でもトップクラスの馬」という表現であれば、受け入れられる人も多いかな。
「日本競馬の最強馬は誰か」という話と一緒で、ファン一人一人の思い入れがあって、「藤澤厩舎最強の馬」を決めるのも難しいですね。
藤澤師が引退される時にグランがたまたま厩舎にいて、番組も盛り上げるための演出で「最強の馬」と言ったのかもしれません。
私はうれしかったですけどね。
ノド鳴りの手術には触れられず
ご存じのように、グランアレグリアは喉頭蓋エントラップメントを発症して、2021年8月に手術を受けました。
天皇賞秋に出走する前ですね。
手術は短時間で済む簡単なものだったと報道されていましたし、その後のレースを見ても、幸いにも影響は大きくなさそうでした。
話をあまり複雑にしてもいけないと思われたのか、グランの手術については全く触れられていませんでした。
手術に触れないなら触れないで、番組としては問題はなかったと思います。
あくまで主役は藤澤調教師であって、グランではないですしね。
杉原騎手のプレッシャー
番組では、ルメール騎手が美浦トレーニングセンターに来て、グランアレグリアの追い切りに騎乗した時の様子が何度か紹介されていました。
でも、グランの引退レース、マイルチャンピオンシップの最終追い切りでは、厩舎所属の杉原騎手が騎乗することに。
杉原騎手は、藤澤師から追い切りで騎乗するように言われて、厩舎の外でうずくまって、頭を抱えていました。
ツイッターでも、この姿が大きな話題になっていましたね(笑)。
「グランは皆が大切に育ててきた馬だから」
と言っていました。
でも、杉原騎手はプレッシャーをはねのけて、見事に大役を果たしました。
藤澤師もグランが走っている時の足音が全然しなかったことに満足そうでした。無駄な力が入っていないということだからです。
池添騎手がグランアレグリアに騎乗していた時、いつも「調教で杉原騎手がよく乗ってくれてる」と感謝していました。
池添騎手も、調教でグランに乗るプレッシャーの大きさを理解していたのでしょう。
先日、JRAが藤澤元調教師とアドバイザー契約を締結したと発表していました。
引退されてからも、その素晴らしい実績と豊富な経験から、助言を求める競馬関係者も多いと思います。
これからもお元気でご活躍ください。
ディープインパクト産駒も数多く藤澤厩舎でお世話になりました。
全頭が期待された成績を挙げられたわけではありませんが、ありがとうございました!
今回の番組を見て、特にグランアレグリアは藤澤厩舎に所属して大切にしてもらい、幸せだったと感じました。
私が感想を書くと、藤澤調教師ご自身のことより、グランアレグリアのことのほうがはるかに分量が多くなってしまった💦
どうぞご容赦ください。