今日はエリザベス女王陛下とディープインパクトとのつながりについて書いていきたいと思います。
新型コロナウイルスの感染が世界中で大きな問題になり、世界の競馬も開催中止を余儀なくされました。
日本は幸いなことに無観客での開催が可能になり、現在も関係者の懸命の努力によって、予定通り競馬が続けられています。
イギリス王室が主催するロイヤルアスコットも、感染拡大を防ぐため、無観客での開催が決定しました。
6月16日~20日までの日程で、いつもの年とレースの実施順などを変更して行われます。
今年は無観客なので、いつも皆が楽しみにしていた、エリザベス女王陛下の馬車でのご入場も見られないんですかね。
無観客でも、テレビでは皆見るんだから、いつも通り馬車で入場してくれないかなあ・・・。
イギリス王室は代々競馬と深い関わりがあり、アスコット競馬場を所有しています。
そのアスコット競馬場で毎年、王室主催で開催されるのが「ロイヤルアスコット」というイベントなのです。
先日、今年94歳になられた女王が、乗馬を楽しんでいらっしゃる写真が公開されました。
エリザベス女王は日本の競馬関係者に会うと、いつも「ディープはどうしているか」と尋ねてくださっていたとか。社台スタリオンにも親書を送ってくださったというし、ご自身の牝馬にディープをつけたりも。とても親しみを感じています。 #ディープインパクト #Deepimpact https://t.co/UzYNnievkh
— Susie (@Susie73629484) 2020年6月9日
女王は競馬が大変お好きで、ご自身も競走馬を所有されています。
そして、日本で競走馬、種牡馬として活躍したディープインパクトとも意外なつながりがあります。
この記事では、エリザベス女王陛下とディープインパクトのエピソードをご紹介したいと思います。
エリザベス女王とディープインパクトの関係
エリザベス女王が競走馬を所有されていることはすでに書きました。
馬主としての女王陛下については、JRA-VANのサイトに秋山響さんが記事を書かれています。
【世界の馬主紹介 Vol.4】エリザベス女王 | JRA-VAN Ver.World
エリザベス女王は、ディープの母方の曾祖母であるHighclereを所有されていました。Highclereは1974年の英1000ギニーと仏オークスを勝った名牝です。
ディープの母系はHighclereの前の世代も、代々王室が所有していたそうです。
Highclereの2番仔のBurghclereが、ディープの祖母にあたります。
Burghclereは、世界有数のサラブレッド事業体であるクールモアグループと深いつながりのあるBarrownstown Studで繁殖生活を送り、ディープの母であるウインドインハーヘアを産みました。
女王は、94歳になられた今はどうかわかりませんが、数年前まではイギリスの有名な競馬日刊紙のRacing Postを朝食の時にお読みになって、競馬の情報をチェックされていたとか。
2015年6月にディープ産駒のスピルバーグが、ロイヤルアスコットのプリンスオブウェールズステークスに出走した時、グリーンチャンネルが中継しました。
その際に、解説の合田直弘さん(世界の合田さんと言いたい・・・)が、女王が競馬に大変お詳しくて、情報収集されていることを話していました。
そして、女王は日本の競馬関係者に会うと、
「ディープは今どうしているのか」
とお尋ねになっていたそうです。
もともとは王室が代々所有していた牝系から、ディープのように大活躍する馬が出たことをお喜びになっていたのではないでしょうか。
ディープ産駒がヨーロッパでも優れた成績を挙げると、女王は自らが所有する牝馬のディプロマを日本に送り、2017年、2018年の2年連続でディープと交配させました。
ディプロマは2018年に日本で牝馬を出産し、その後イギリスに戻って、2019年に牡馬を出産しました。
ディプロマを日本に送られた際には、女王がディープが種牡馬生活を送っていた社台スタリオンステーションに、親書を送られたとのことです。
追記: この記事を書いた後に、J-horsemanというサイトのインタビュー記事を見つけました。
ホーストレーダーのジョン・マコーマックさんにインタビューしたもので、この方はディープの母のウインドインハーヘアの取引を仲介された方です。
ディープがダービーを勝った後、母馬が女王が所有されていたファミリー出身だから、マコーマックさんが女王のレーシングマネージャーに
「カツミさん(ノーザンファーム代表の吉田勝己さん)に手紙を出したらどうですか」
と話したら、本当に手紙を書いてくれたのだそうです。
マコーマックさんは、
「自分のファミリーの子孫が活躍して女王も嬉しかったんでしょうね」
とおっしゃっています。やっぱりそうですよね。
ということは、社台グループは女王から複数回親書を受け取られているということですよね。
親書は公開するものじゃないでしょうし、女王陛下にも失礼だから公開しないでしょうが、見てみたいなー。
あと、ディプロマという牝馬ですが、ディープが亡くなる前の2019年3月に、NHK北海道が放送したディープの特集番組のなかに登場していました。
2020年6月現在、NHKのサイトの札幌放送局のページで、「世界が求む ディープインパクトの血統」という番組の記事を読むことができます。
その記事に、ディプロマの写真が掲載されています。
また、社台コーポレーションの海外交渉担当の細田直裕さんのコメントが紹介されています。
「女王陛下の方から(種付け)のオファーがありました。私どもも光栄なこと。もともとは王侯貴族が始めたスポーツでありゲームであるので、認められたというのは本当に意義のあることだと思います」
ちなみに、フジテレビが制作したディープのレース映像を収録した以下のDVDには、ディープの母について取材した特典映像が収められています。
ディープが凱旋門賞に出走する前に、俳優の緒方直人さんがイギリスとアイルランドに取材に行かれた様子をまとめたものです。
アイルランドのBarrownstown Studでは、牧場のオーナーに母のウインドインハーヘアが生まれた時の様子や、繁殖牝馬として牧場に戻ってきた時の話を聞いています。
また、母が初仔を出産した後に牧場を出た経緯や、ディープインパクトの印象なども尋ねていて興味深いです。
イギリスでは、競走馬時代にウインドインハーヘアを管理したヒルズ調教師にも話を聞いています。
ウインドインハーヘアは走りたいという気持ちが強い牝馬で、レースではいつも後方から行って、鋭い足で伸びてくるという話をされていました。
ディープのレースぶりと共通するものがあって、面白かったです。
ウインドインハーヘアは子供をみごもった状態でG1レースを勝った馬としても有名ですが、そのあたりの経緯についても触れています。
ヒルズ調教師がディープの天皇賞春の映像を見て、感嘆されていたのが印象的でした。あのレースを見れば、誰でもそうなりますよね・・・。
エリザベス女王とディープインパクト産駒

Photo by Rawisara Prachaksubhanit on Unsplash
エリザベス女王は、英ダービーやロイヤルアスコットには毎年出席されて、競馬をご覧になっています。
その御前で、ディープ産駒が大きなレースを勝てたらいいなとずっと思っていました。
残念ながら大レースというわけにはいきませんでしたが、2017年に産駒のSeptemberが、ロイヤルアスコットのChesham Stakes (リステッドレース)で優勝しました。
ロイヤルアスコットですから、女王も見てくださったはず。
表彰式で王室の方がトロフィーなどを関係者に授与されるのですが、G1ではないので、女王からいただいたわけではありません。ちょっと残念。
2015年にはスピルバーグが、2016年にはエイシンヒカリがロイヤルアスコットのプリンスオブウェールズステークスに出走しましたが、どちらも上位には来られず。
2018年にはSaxon Warriorが英2000ギニーで優勝しましたが、女王が競馬場におみえになったかはわかりません。たぶん、いらしていないだろうなあ。
英ダービーでは残念ながら破れてしまったので、女王の御前でレースを勝つことはできませんでした。
特に日本から遠征したディープ産駒にとって、自然のままの地形を生かし、高低差もあり、でこぼこもあるイギリスの競馬場は、良さを発揮しにくい舞台なのかもしれません。
フランスや香港、ドバイ、オーストラリアでは実績があるんですけど。
でも、Saxon Warriorが英2000ギニーを勝っているんだから、全くダメというわけではありません。
女王陛下はご高齢のため、日本に来られることは難しかったでしょうし、ディープも種牡馬として大忙しで、リスクのある輸送はできなかったでしょう。
でも、女王陛下には一度ディープと対面していただきたかったと思います。
ディプロマが産んだディープの子供たちが活躍してくれることを祈っています。
競走馬として活躍できなくても、繁殖馬として、血をつないでいってくれるといいな。